30 1.蘇東興業の誕生 蘇東興業への社名変更 一宮整理は1924(大正13)年6月の重役会で当初予 定していた一宮市から起町の新しい土地(中島郡起町大 字三条字大道南15番地)への移転を正式に決定し、さら に同月に開催された第3回定時株主総会で新しい社名へ の変更を決定した。蘇東興業(以下当社)の誕生である。 社名の「蘇」は中国の蘇水、蘇江に由来し、日本ライン の絶景を紹介した紀行文「下岐蘇川記(岐蘇川ヲ下ルノ 記)」(斉藤正謙)をはじめ、「岐蘇名所図会」(嘉永年間) など、木曽にこの「蘇」を使ったものが散見され、木曽川も 「岐蘇川」と書かれたものもあった。そこから木曽川の東 側一帯を「蘇東」と呼ぶようになり、大正時代の尾西では 蘇東耕地整理組合、蘇東用排水土地改良区、蘇東料芸 組合、蘇東線などの名称がみられた。新会社はその立地 から「蘇東」と命名されることになったのである。 また「興業」は新たに事業を始めるという意味だが、の ちには染色整理の代名詞として使われるようになった。 1924年7月11日、一宮区裁判所で商号の変更、本店 移転の登記を行い、正式に発足となった。同年10月には 後藤取締役の紹介で後に当社の社長となる服部秀三郎 が支配人として入社した。1925年には辞任した長谷川伊 蔵を継いで山本與三郎が社長に就任した。 操業の開始 1925(大正14)年4月15日、木造瓦葺平屋建て307.5 坪の整理工場と39.5坪の汽缶室(第一ボイラー室)が完 第2章 蘇東興業の誕生と戦時下の経営 (1924~1945) 第2章 │ 蘇東興業の誕生と戦時下の経営(1924~1945) ■社章 社章の菱Sマークの原形は、一宮整 理株式会社の創立準備の段階で高 木 四郎が考案したもので、当初は 菱形の枠の中に"一宮"のIと“整理” のSを陽と陰に組み合わせてあった。 枠の菱形は当時外国の繊維関係の マークに多く見られたという。 新しい会社のマークはこれをアレン ジして、菱形の中にS一文字とし、Sは 社名の“蘇東”の頭文字を示すことと なった。当社の菱Sマークの誕生以 来、整理屋、染色屋、繊維関係会社の マークに菱形が目立つようになった。
RkJQdWJsaXNoZXIy NDY3NTA=